脚本:富野由悠季・高橋哲子 絵コンテ:香川豊 演出:渡邊哲哉 作画監督:しんぼたくろう・中田栄治



比瑪
(ナレーション) 「あのネリー・ブレンがスケートをやったという話もあたしは後で聞いたんだ。ネリーさんと勇のことは想像できない。あたしは、見たものしか分からないし見えないものなんかに興味ない。人を理解するって、それでいいんだって思う」

勇 「ううっ!」
勇 「オルファンだ、まだ大陸・・・ノヴィス・ノア?」
勇 「涙が枯れたと同時に、極東に戻れたというわけか。ここは中国か?」
勇 「 おまえだって、いつまでもメソメソしてるなよ、俺を乗せてくれたんだ。二人してこの苦難を乗り越える・・・俺のブレンは雄々しかったんだぞ。そのビットだって取り込んだんだろ。もう泣くんじゃない・・・ん?」
勇 「疲れたのか?この辺りで寝る場所ったって・・・」

村人 「また形の違うアンチボディだ!どれだけ災難が来れば終わるんだ!」

勇 「うう・・・俺もお前と同じだ。でもじっとしていても回復できないのが俺達人間なんだよな」
勇 「瓜は食べたことないけど・・・甘いはずだよな」
勇 「 うっ!」

コモド 「ナンガ、ここにもアメリカ軍だよ」
ナンガ 「何でアメリカ軍が中国大陸ででかい面をしてんだ?」

アメリカ兵 「パスポートが欲しけりゃちゃんと並べ!」
難民 「向こうのゲートと同じ事言いやがる!」
アメリカ兵 「2週間くらいは誰だって待ってるんだ!並ばないと撃つぞ!」

源野 「ヘイ!ヘーイ!乗せてってー!」
源野 「・・・んもう!軍人は横柄なんだから!今度こそ」
源野 「ねえ!こら!お前!乗せなさい!乗せろって言うの!うっ・・・誰が落ちるもんですか!」
輸送班員A 「ん?」
源野 「乗せろって言ってるでしょ!」
輸送班員A 「うえっ!」
輸送班員A 「死にたいんですか!?怪我しますよ!」
源野 「私は日本政府直轄の理化学研の研究員なんですよ」
輸送班員A 「研究員?」
源野 「是非オルファンに入国をしたいのです」
輸送班員B 「ゲートに行って申告してください」
源野 「半月とか1ヶ月かかるんです、私は・・・」
輸送班員B 「出せ!」

源野(※) 「うわっ・・・あう!ああん!鬼畜米米!」
ナンガ 「暫らくぶりだな、ドクター源野じゃないか」
源野 「ひぃっ!まあ、まあ、まあ、ナンガさんにコモドさんもいらっしゃるなんて」
ナンガ 「大陸に進出なさってもお元気で」
源野 「元気じゃないわよ。ノヴィス・ノアは今どこ?勇は戻ってきたの?ああん、ナンガさあん」
コモド 「ふふ」

比瑪 「アンチボディの反応があったのはこの辺りよね。ここに出られたって事はそうなんでしょ?ブレン」
ナッキィ 「こいつらが嫌がってないって事はグランチャーではないって事だけどなあ」
比瑪 「そうだよねえ!勇がここに出て来たんだ!」
ナッキィ 「別にあいつとは決まってない。ブレンパワードは世界各地で生まれてるんだから」
比瑪 「なんて意地悪な言い方でしょ」
ナッキィ 「比瑪ちゃん。僕はブレン3人のリバイバルに立ち会った男なんだぜ」
比瑪 「嘘おっしゃい!ノヴィスにそんな人居ないわ!その辺りに転がっていたブレンを拾ったんでしょう!?」
ナッキィ 「その言い方は酷くないか比瑪ちゃん?」
比瑪 「だったら・・・」
ナッキィ 「だからでしょ?俺みたいな男はさっさとオルファンにぶつかっていなくなれ、と連れ出した」
比瑪 「違うわよ。ノヴィスに居辛そうだから御一緒しましょうって誘ってあげたんじゃないの」
ナッキィ 「別に居辛くはない」
比瑪 「あなたは勝手過ぎるんです!」
ナッキィ 「ラッセ・ルンベルグは、僕のブレンを自分のにしたんだぞ!」
比瑪 「あれは、あのブレンがラッセを気に入ったんだから、あなたは何も言う権利はないわ!・・・あっ?」
ナッキィ 「グランチャーじゃないのか?」

比瑪 「誰?あの子」
ナッキィ 「まるで新顔だぞ」

比瑪 「ふうん」
ナッキィ 「図体は大きいけどブレンパワードだ」
比瑪 「うん、この子も優しい顔してる」
ナッキィ 「デリケートな瞳をしている。あっ、宇都宮!いいのか?」
比瑪 「大丈夫だよ!・・・フリュイドスーツ?勇のじゃない!」
比瑪 「勇のだ!勇のだ!・・・あれ?何だ?ブレスレットみたい」
比瑪 「ブレスレットだ。でも、これ勇のスーツだけどなあ」
比瑪 「ねえ君、このブレスレットは君と一緒に働いてる人の物?」
比瑪 「そうなんだ。けどコックピットにある服はあたしの知ってる人の物なんだよ?」
ナッキィ 「ん?」
比瑪 「何よ!」
ナッキィ 「コックピットの壁」
比瑪 「え?」

村人A 「子供一人だけなのか」
村人B 「怪我をさせるな、ひっ捕らえてアメリカ軍に売るんだ」

ナッキィ 「畑からこっちに逃げ込んできた?」
比瑪 「勇よ!勇が・・・!」

村人A 「報奨金が貰えるんじゃ!」
村人B 「アメリカ軍はグランチャー使ってんだから、ブレンには金出すんだよ」
勇 「なんだよ!アメリカだ報奨金だ、って!」
村人A 「こいつはどうすんだ?」
村人C 「ブレンタイプのアンチボディは谷へ捨てる!」
村人B 「アメリカ軍にゃあ無線打てよ」
勇 「くそお!こ、このっ!」

ナッキィ 「こいつが見ていた事なのか?」
比瑪 「この前の景色だったわ」
ナッキィ 「オルファンに進駐してるアメリカ軍に引き渡されたら助け出すのに苦労するぞ」
比瑪 「勇の事?」
ナッキィ 「探すぞ!」
比瑪 「ブレンはどうするの?」
ナッキィ 「比瑪とここで待っていてくれ」

ナッキィ 「状況が解ったら、ブレンで強襲を掛けて・・・うわあ!」
比瑪 「あああ!」

ナッキィ 「引っ掛かった・・・」
比瑪 「い、痛あ」
村人A 「抵抗しなければ命は取らねえ」
村人B 「銃、ナイフを出しな!」
ナッキィ 「こいつ!」
村人A 「銃を投げろ」
比瑪 「どちらの方なんです!?」
村人B 「早くしねえと撃つぞ!」
女長老 「殺してもここに埋めればいいだけじゃからな」
比瑪 「こ、怖ぁ・・・」

村人A 「それよりオルファンに乗れる権利のほうがいいな」
村人B 「オルファンはアメリカなんじゃろ?」
村人C 「白人と一緒なの嫌よねえ」
村人D 「パスポートがあればさあ」

村人A 「どうでした?」
女長老 「わしらの捕まえたブレンはノヴィス・ノアのクルーだと言うぞ」
村人B 「やったあ!金もパスポートももらえるぞ!」
村人C 「これで盗みもやらずにすむ!」
女長老 「静まらんか!金ではなく食糧生産のプラントを用意するそうだ」
村人D 「冗談じゃねえ!いつまでもこんな所にいられるか!」
女長老 「しばらく食い繋げる」
村人E 「なら、鶏と豚もいるぞ御長老」
女長老 「それは引渡しの時に交渉する、なにしろ見たことないブレンパワードの話をしたらアメリカさんの声が上擦った」
村人D 「ど、どういう事で?」
女長老 「アメリカグランチャーの脅威になるんじゃろう」
村人F 「その褒賞は別に催促したのか?」
女長老 「盗人100年やってきた知恵はなにも要求せん、向こうと会ってからの事じゃ!」
村人C 「それが賢いというものじゃあ!」
村人D 「へっ!全員のパスポート貰えばいい!」

村人 「長老のお手並み拝見という所じゃ」
ナッキィ 「あのなあ、アメリカ軍に引き渡すって言ってるんだから、逃げるチャンスはいくらでもあるんだ、そんな事しなくたって・・・」
勇 「ぺっ!盗賊の村なんだぞ、どうなるかわかるもんか」
比瑪 「無事を喜び合えるって言うのこう言う事じゃなかったんだけどなあ。わー、勇元気だったんだあ、ってさあ?ヒシッっと抱き合ってロマンチックだなあ、って事全部無し、現実ってこうなんだろうなあ。でも勇、一生懸命やってくれるから・・・くぅ~む~くう~~・・・てやっ!」
勇 「ぐっ!」
比瑪 「やったあ!勇の歯、丈夫なんだ。・・・勇?どうしたの?」
ナッキィ 「再会のキスでもすればロマンチックなシーンになるぜ?」
比瑪 「そうか」
勇 「ん?」
比瑪 「まっ!・・・ったくう!」
ナッキィ 「ほら、遊んでないで解いてくれよ」
比瑪 「あっ」
比瑪 「くあ~」
ナッキィ 「手を使っていいんだぜ?」
比瑪 「あ、そっか」

勇 「ここにある物は全部盗んできた物だけど、オルファンが上陸して、大陸中が無法地帯になったんだ。村単位で自衛するので必死なのさ」
ナッキィ 「それでアメリカ軍とも繋がるか?」
勇 「ああ、お尋ね者の俺達を捕らえれば、そりゃあ有頂天になるさ」
比瑪 「なんで私達がお尋ね者なのさ?」
ナッキィ 「俺のせいなんだろ?」
勇 「違うよ、ノヴィス・ノアが国連の下にいる。国連とアメリカの諍い・・・」
ナッキィ 「あっ!」
勇 「ブレン!ネリー・ブレン!」
比瑪 「・・・ネリーのブレン?」

(アイキャッチ)

村人A 「だ、駄目だよ!撃っても効かないよ!」
村人B 「急所に当てるらしいって言うぞ」
村人B 「う、うわああ!」

勇 「悪い、よく来てくれた!」
比瑪 「やっぱこれ、勇が使ってる・・・ネリー・ブレン?勇のブレンはどうしたの?」
勇 「こいつがそうだ」
比瑪 「嘘つき!ぜんぜん人相もスタイルも違う!」
勇 「再リバイバルしたんだ。ネリー・ブレンとユウ・ブレンが体を補い合って、リバイバルし直したんだ。よく戦ってくれた」
比瑪 「誰とさ?」
勇 「ジョナサンの新しいグランチャーとだ」
比瑪 「ジョナサンがまだ生きてたの!?」
勇 「信じられないようなグランチャーを手に入れてた」
ナッキィ 「急げ!勇!」
勇 「ん!?」

女長老 「落とすぞ!」

ナッキィ 「危ないぞ婆さん!」
勇 「ネリー・ブレン、あの村人を怪我させないで追い払えるか?」

女長老 「はっ!」
村人 「うああ!」
女長老 「くっ、せっかくのお宝が!これで孫達に肉が食べさせられなくなった!」

比瑪 「なんだか可哀想じゃない?」
勇 「ああいう逞しい人達は生き残るよ」
ナッキィ 「俺が世話になったコゥ・チェンのとこも大家族で、あんなもんだったなあ」
比瑪 「モハマドさんを紹介してくれた人?」
ナッキィ 「そうだ。モハマドさんの所も大家族でさ、ノヴィスも似たようなもんで、俺はそういうのに縁があるんだな」
比瑪 「ナッキィのお父さんとお母さんは?」
ナッキィ 「そういうのはいない」
比瑪 「あっ・・・」

ナッキィ 「いいぞ。そのまま後ろを警戒しつつ、前へ回り込め。ようし、良い子だ!」
勇 「へえ、ナッキィのブレンも凄いんだな」
比瑪 「私のもよ、このブレンと会って気が利く様になったのね」
勇 「そうなのか」
比瑪 「ナッキィ・ブレン!お利口さんよ!」
勇 「・・・あ!いつ取ったんだ!」
比瑪 「あの村の人に捕まる前!」
勇 「そうか、そうだよね」
比瑪 「それ、女物よね?」
勇 「ネリー・キムさんの形見なんだ」
比瑪 「形見?亡くなったの?その方」
勇 「ネリー・ブレンが俺のブレンとリバイバルするときにね。情け容赦ないんだ」
比瑪 「怖かったんだ」
勇 「ああ。オルファンが浮上する時に、ネットが歪んだりしたらああなるかもな」
勇 「・・・可能性はある」
比瑪 「そんなに怖い事があったんだ・・・でも再リバイバルした時、ネリーと勇のブレン、一緒になったって・・・そう言ったよね?勇!」
勇 「そう言った・・・そうか!地球の問題やオルファンの事って全てが絶望的な事じゃないかもしれないんだな?」
比瑪 「そうよ!ブレンは空を飛んでんだもの!」
勇 「上手くいくって事だ!」
比瑪 「そうだよ絶対!」
勇 「そうだよな!誰が絶望するもんか!」
比瑪 「ふふっ、そうそう!」
ナッキィ 「なんだ、やってるじゃないか」
勇 「そうだよ、そうだったんだ!」

バロン 「ジョナサン、オルファンは女性の姿をその芯に蓄えていると言うが、本当か?」
ジョナサン 「ああ、バロン・マクシミリアン。あなたのバロンズゥはオルファンの懐に飛び込みました。あなたはオルファンに迎えられるに相応しい方という証明です。リクレイマーはあなたの英知と高潔さで、より良き方向に導かれるでしょう」
バロン 「ん?あれは?」
ジョナサン 「な、なんなんだよ!あれは!?」

ジョナサン 「オルファンの装甲に・・・誰がこんな悪ふざけをするんだ!」
バロン 「リクレイマーのものとは思えないが、どういう事なのだジョナサン?」
ジョナサン 「俺が聞きたい。バロン・ズゥ!ソード・エクスを構え!」
ジョナサン 「こいつらはリクレイマーではない」
バロン 「分かっている。入国審査があるようだ」
ジョナサン 「入国審査だと?ジョナサン・グレーンが強力な・・・」
アメリカ兵 「所属不明のグランチャーに告ぐ!入国審査の為下のシャッターに進め!」
ジョナサン 「指図をするな!」
バロン 「ジョナサン!ここは彼等に従え」
ジョナサン 「何故です!」
アメリカ兵 「オルファンがアメリカの53番目の州になったのも知らないのか?」
ジョナサン 「オルファン州とでも言うのか!」
アメリカ兵 「抵抗するなら、ブレンパワードタイプとみなして撃墜する!」
ジョナサン 「面白い、お前達軍隊グランチャーに落とせるか!」
アメリカ兵 「うわああ!」
ジョナサン 「バロン・マクシミリアンのバロン・ズゥを案内してきたんだ、不服なら貴様達を・・・」
クインシィ 「ジョナサン、ご苦労様」
ジョナサン 「クインシィ?」
クインシィ 「私からはジョナサンの背中が見える」
ジョナサン 「どこにいるんだ?」
クインシィ 「中央コントロールのオーガニック・レーダーから端末を繋いだ。そのバロン・ズゥとかの正面シャッターのデッキにいる。」

クインシィ 「バロン・マクシミリアンという男が見える。何者だ?」
ジョナサン 「このグランチャーをリバイバルさせて、私に与えてくれた恩人だ」

シラー 「ジョナサンが帰ってきた!」
リクレイマー 「見ろよ!あのグランチャーは進化したタイプだ!」

翠 「ジョナサン!帰ってきたのね、ジョナサン!無事でよかった、本当に心配していたのよ!あなたが帰ってくれれば、もうオルファンにはすぐにでも銀河へ飛び立ってもらえるわ」
ジョナサン 「ドクター、紹介したい人がいるんだ」
翠 「ああ、あの方?」
バロン 「左様、プレートの導きでジョナサンと巡り合うことができた者です」
翠 「伊佐美翠、リクレイマーの研究班をまとめています」
バロン 「ならばリクレイマーのリーダーの研作博士はどちらかな?」
翠 「あれは、アメリカ軍との応対で飛び回っておりまして何処にいるやら・・・」
バロン 「それは・・・察するところ、クインシィ・イッサーと見たが?」
クインシィ 「名前を知ってくれて嬉しいが、どういうつもりでオルファンに来たんだ?バロン」
バロン 「グランチャー部隊を取りまとめる御苦労を重ねる貴公を、助けたいと考えて、バロン・ズゥをジョナサンに預けた」
翠 「クインシィを助ける?」
クインシィ 「信じていいのかな?」
バロン 「ジョナサンには良いリーダーが要る」
翠 「余計な事を!」
ジョナサン 「よう!シラー!」
シラー 「おかえり、面白いグランチャーじゃないか」

勇 「あれ?みんなアンチボディじゃないか!」
比瑪 「来る途中ブレンはここに来たがったのよ」
ナッキィ 「震えるな。見たいって言うから連れて来たやったんだろ?しっかりしろ!これがアメリカ軍のやり方だ、ちょっと性能が悪いと捨てちまう!」
比瑪 「じゃあこれ、アメリカ軍が持ってきたもの?」
勇 「オルファンのものだよ。大陸で出たものをまとめたって、こんな数はないよね?ナッキィさん」
ナッキィ 「半年以上かかって、4人集めたのが精一杯だった」
比瑪 何故ここに捨てたの?」
勇 「アンチボディなら、グランチャーもブレンも、同じような場所で墓場を作りたいと思うんだよな?何故なんだ?教えてくれ、ネリー・ブレン」

シラー 「凄いだろう!あっと言う間にこうだ!軍っていう組織は機能的だし、来た連中も礼儀正しい。オルファンにとってアメリカナイズはいい事だ」
ジョナサン 「シラー、貴様逆上せていないか?」
シラー 「ガバナーだって妥当だって言っているんだ。あのクインシィだってアメリカ軍に従ってるのは見たろ?」
ジョナサン 「クインシィの腹の中くらい想像がつく。・・・なんですか?ドクター」
翠 「ちょっとやつれたかしらね?バロンに虐められた?」
ジョナサン 「そんなことありません」
バロン 「グランチャーはアメリカ軍が持ち込んだのか?」
翠 「オルファンで提供したものが半分、持ち込んで来たものが半分。ガバナーの采配で上手く編成できました」
バロン 「オルファンのガバナーか。狡猾な事を」

比瑪 「なにしてるわけ?」
勇 「ナッキィは4人のアンチボディに付き合ってるから俺よりアンチボディを知ってるみたいなんだよな」

ナッキィ 「そうか、わかったぞ、お前達が何でここで死んでいく気になったのか・・・比瑪!勇!こいつらはオルファンに行きたくなかったんだ。それで人の乗せるのを拒否してここに集まったんだ」
勇 「どうしてそんな事が解る?」
ナッキィ 「こいつらのハッチもシャッターも、硬く閉じている。人間を乗せることを拒んだアンチボディはいずれ硬化する」
比瑪 「そ、そうよね」
ナッキィ 「アメリカ軍の扱いも乱暴だったようだ」
勇 「オルファンから逃げた時に、やられたりもしたのか?」
ナッキィ 「そうだろうな。このブレンは乗り手を無くしてフラフラしてる時も、ハッチは開いていた。オルファンに行くことを予想してないブレンはそういうものなんだ」
勇 「それにひきかえ彼らは、オルファンが上陸してから逃げ出さなければならなかった」
ナッキィ 「そうなんだよ。もう少し前に出会っていれば、こいつらを助けられたのに、それが出来なかったんだよ俺には・・・!」
比瑪 「ナッキィさん・・・」

比瑪 「カントが言ってたものね、ブレン達は花が好きだって。摘むと可哀想だけどこれなら根付くよね」
比瑪 「ネリーさんの形見を埋めるの?」
勇 「うん、ここならネリーも喜ぶはずだ。・・・ん?うわあっ!」
比瑪 「ネリー・ブレン!」
勇 「気持ちは分かるけど、ネリーブレン!・・・ブレスレット一つの記憶より、お前と俺の中に染み込んだネリー・キムの思い出を大切にしたいな、一杯あるだろ?ここにいる宇都宮比瑪って、良い子なんだぞ。こういう事をちゃんと分かってくれるんだ。お前の体の中にはネリーも、俺のブレンもいるんだろ?これで十分じゃないか、ネリー・ブレン」
比瑪 「ありがとう勇。でも私、人を愛せない人って嫌いだよ」
勇 「ありがとう。ネリーはね、ジョナサンとバロンとバロン・ズゥがオルファンに入ることを恐れてたんだ」
比瑪 「バロン?バロン・ズゥ?」
勇 「ああ」
ナッキィ 「一つの記憶を封印するかい?」
勇 「そうする」
勇 「・・・くっ!」

※「鬼畜米米」という言葉自体はありませんが、「鬼畜米英」では道理が合わないので聞こえる侭の言葉で書きました。
「鬼畜米兵」という説もあり。


第18話「愛の淵」←
https://ishikobafuji.diarynote.jp/201204032140286202/
 →第20話「ガバナーの野望」
https://ishikobafuji.diarynote.jp/201207101802064457/

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