脚本:富野由悠季・高橋哲子 絵コンテ・演出:越智浩仁 作画監督:しんぼたくろう・中田栄治



比瑪
(ナレーション) 「何か大事な事ってあたしがいないところで起こるんだよね。勇とお姉さんの依衣子さんのことは首を突っ込んじゃいけないことなんだろうけど、クインシィ・グランチャーの爪が伸びた事件はそりゃあ見たかったわぁ。ホラーは嫌いだけどね 」

ヒギンズ あのグランチャーについていけば、オルファンに潜入できる。タイミングを合わせればいいんだから…レイト艦長、私がきっちりカタをつけて見せるよ」

シラー 「あっ、ごめん!ここが痛いかい?遠慮なくお言い。クインシィと仲良かったって、あたしは気にしないんだからさ」
シラー 「ジョナサーン、指以外の傷は無いみたいだよ」
ジョナサン 「じゃあ何でこの中にクインシィは乗ってないんだ!どっかに落っことして、一人で戻ってきたとでも言うのか?」
翠 「依衣子が戻ったんじゃないの?」
ジョナサン 「コックピットは空です!」
翠 「空?乗っていない?何故です!」
ジョナサン 「さぁてねぇ!ノヴィス・ノアに捕まったか?あるいは勇にやられましたかねぇ?ハッハッハ!」
翠 「…グランチャーも調べましょう。そうすれば、何が起こったか分かるはずよ」
ジョナサン 「娘の安否など忘れているのかと思ってましたがね」
翠 「あなたはバロン・マクシミリアンのアンチボディになりきったようね?ガバナーに近い私に近づくなと命令されているんでしょう?そうでなければ、あれから一度も…」
ジョナサン 「博士こそ、オルファンの銀河旅行も近いんで、俺なんかには飽きてるんじゃないかと思ってましたよ」
翠 「うっ…!」
ジョナサン 「へへっ・・・」
翠 「私が来る前に勝手に触って!」
シラー 「あぁっ!」
翠 「私の仕事を取らないで!」
シラー 「何だ、このババア!ヒステリー起こして!」
シラー 「けどさぁ、お前結構クインシィを好きだったはずなのに、何でクインシィを見捨てて来ちまったんだよ」

研作 「オルファンといえども、海底から浮上するまでは時間がかかったが、地球の重力から逃れるのは、容易なはずです」
バロン 「お嫌なのか?オルファンが宇宙へ飛ぶのが」
研作 「オルファンは、内部に取り込んだ我々の情や意志を汲み上げるように作用することもわかってきました。ということは、我々が地上で暮らすことを願えば、オルファンは人類の新しいエネルギー源にすることも、出来たはずなのです」
バロン 「ほぉ?」
研作 「しかしそれが出来なくなったのです。今ここにいるアメリカ軍も、女達も、地球から逃げ出すことしか考えていない。それではオルファンはジャンプします」
バロン 「オルファンはブレンパワードを自らに引き入れたりする、身勝手なところもある…それを考えれば、オルファンは好きにやると思えるが?」
研作 「ミサイル攻撃の後の消失したブレンのことか?」
バロン 「そうだ」
研作 「宇都宮比瑪のものです。オルファンはあの子に興味を持った。だから取り込んだのです」

直子 「比瑪ちゃん、比瑪ちゃん」
比瑪 「ん…」
直子 「比瑪ちゃん!」
比瑪 「母さん?」
直子 「気がついた?比瑪ちゃん」
比瑪 「ああ、直子おばあちゃん」
直子 「大丈夫?」
比瑪 「直子おばあちゃん、何してんの…?あれ…?」
比瑪 「ん…あっ!ここ!直子おばあちゃん!どうしてオルファンにいるんです!?」
直子 「ゲイブリッジさんについてきたら、ここに来てしまって…」
比瑪 「どうして!」
直子 「オルファンを復活させたガバナーだったのよ、彼」
比瑪 「ゲイブリッジ司令が…?ガバナーって何です?」
直子 「リクレイマーの統括者で、オルファンの力を調整しようとしている人」
比瑪 「リクレイマーの?そんな…」
比瑪 「どうしたのブレン?あ…」

米軍兵A 「オルファンの表面に局地的な微振動が観測されています!」
米軍士官 「外界反応の痙攣か?」
米軍兵A 「はっ!」
米軍士官 「哨戒中のグランチャーを向かわせ、原因を確認させろ!」
米軍兵A 「はっ!」
米軍士官 「オルファンの対抗要因、ブレンパワードの接近か」

ヒギンズ 「マズったなぁ。オルファンに近づいたのはいいけど、どこから潜入すれば…はっ!アーミーのグランチャー…」
ヒギンズ 「ここで見つかったらレイト艦長に会わせる顔がないわ、静かにね?」

米軍兵A 「お?痙攣が消えました!」
米軍士官 「グランチャーからの報告は!」
米軍兵A 「ありません!」
米軍士官 「オルファンがジャンプする前兆か」

ヒギンズ 「何あの光…呼んでるみたい」
ヒギンズ 「ハッ!あれは…」
ヒギンズ 「あれは、一年前の私?」
ヒギンズ 「ハッ…ブレン!おまえ、引き寄せられてるわよ!」

直子 「比瑪ちゃん!」
比瑪 「あなたって人は!なんて大人なんでしょう!」
直子 「比瑪ちゃん!ゲイブリッジさんは…」
ゲイブリッジ 「いいよ、直子」
比瑪 「よかぁないわよウソつき!あなたが一番悪い人だって分かったんだから!」
ゲイブリッジ 「比瑪ちゃんの気持ちは分かるが…」
比瑪 「比瑪ちゃんじゃない!」
ゲイブリッジ 「私は、天然自然の為すものに、人類が畏敬の念を起こしてほしいと、願っているのだ」
比瑪 「え?」
ゲイブリッジ 「物事が人の願い事通りに都合よく行くものではないと、教えたいのだよ」
比瑪 「オルファンはブレンと同じ生き物ですよ?ちゃんと面倒見てあげれば私達とだって仲良くしてくれるわ!」
ゲイブリッジ 「オルファンは地球外の産物だ。地球との共生はありえない」
比瑪 「オルファンは、ずっと海の底で、海の生き物と一緒に暮らしてきました!」
ゲイブリッジ 「だがオルファンはその海から離れたのだ!」
比瑪 「そ、そうだけど…え?」
比瑪 「ちょっと君!どうしたの!?」
直子 「ゲイブ!」
ゲイブリッジ 「調べているのだろう。敵であるオルファンを」
比瑪 「駄目よ!そんなことしたらオルファンに力を吸い取られちゃう!」
比瑪 「やめなさい!わっ!」
比瑪 「こら、勝手に動かないで!オルファンの中なのよ!」
直子 「比瑪ちゃん落ちないで!」
ゲイブリッジ 「ぬぅっ」
直子 「ハッ…!…ゲイブ」
ゲイブリッジ 「直子!…直子」

比瑪 「ブレン!おとなしくして!うわっ!」
フィジシストA 「うわっ!」
フィジシストB 「きゃあっ!」
フィジシストA 「ハッ…!」
フィジシストA 「と、父さん…父さんを、連れて行かないでぇー!」
フィジシストB 「あ、あれは…!」
フィジシストB 「嫌ぁーっ!パパ!ママー!」
フィジシストC 「あの時、誰も!誰も助けてくれなかったじゃないか!」
フィジシストC 「だから俺は…!」

比瑪 「ブレン!酔っ払ってるの!?アルコール無しで酔うんじゃないの!」

シラー 「お前はお休みだ」
シラー 「ガバナーは現状を監視しろと言うが、そういう甘いことばかり言っていて何が分かる!」
ジョナサン 「シラー、俺もすぐ行く」
フィジシストD 「おい!おとなしくしろ!うわぁ!」
ジョナサン 「何っ!?」
フィジシストE 「ぐわっ!」
翠 「何事です!」
ジョナサン 「それはこっちのセリフだ!ありゃあ一体何なんだ!」
翠 「何って…あれは何!?」

ヒギンズ 「うっ…潜、成功したの?」
ヒギンズ 「大人しく待ってなさいね」
ヒギンズ 「アーミーとリクレイマーを統率している人物がいるって勇は言っていたわ。その人物を始末すれば、オルファンを止められるかもしれない」

(アイキャッチ)

比瑪 「うわっ!きゃー!わっ!ひゃっ!きゃああー!」
比瑪 「ひゃー!うっ!…酔っ払って!どうしたって言うのブレン、オルファンの中なのよ!?」
比瑪 「うんしょっ」
シラー 「ブレンがオルファンの中で遊び回ってるなんて、どういうことだ!」
比瑪 「3人もグランチャーが!?」
比瑪 「ブレン!逃げましょ!」
比瑪 「ぐっ!ああっ!」
シラー 「このスタンバー、効くぞ!」
比瑪 「うっ!くああ!」
シラー 「いいザマだねえ。オルファンの中で好きにやるから、こういう目に遭うんだよ!」
比瑪 「ブレーン!」
シラー 「ブレンという奴は力を溜め込むのか!」
比瑪 「うはっ!」
比瑪 「あっ!またオルファンのウェハーが光る!?」
シラー 「オルファンのウェハーが裂ける!」
比瑪 「きゃあああああ!」
シラー 「わああああー!」

ヒギンズ 「騒がしくなった、潜入がバレた?」
ヒギンズ 「ん…?熱い…」
ヒギンズ 「バラが燃えている?」
米軍兵士B 「おい!お前!」
ヒギンズ 「はっ!」
米軍兵士B 「所属!姓名は!」
米軍兵士C 「ノヴィス・ノアのクルーじゃないか!」
ヒギンズ 「くっ!」
米軍兵士B 「ノヴィス・ノアのクルーを発見した、援軍を回せ!」

比瑪 「んんっ!…いったぁ~、へっ?」
比瑪 「ヒヒンフフエン…ほーひてほほひ?(ヒギンズブレン…どうしてここに?)」
比瑪 「あわわわわ!」
シラー 「くっ、何がどうなって…はっ!ブレンがふたりも?こいつら中からオルファンを潰しに来たのか!」
比瑪 「ひ、ヒギンズさん!中にいないんですか?」

ゲイブリッジ 「バロン・マクシミリアンの命令か」

研作 「リクレイマー達は統率できるでしょうが、オルファンの機能は、オルファンにしかコントロールできないのは、あなただってご存知のはずだ!」
バロン 「ジョナサンに正義を行わせて、オルファンの意志に連動させるだけだ。バロンズゥがそれを選択した!」

ヒギンズ 「比瑪ちゃん!」
ヒギンズ 「あたしのブレンが、立ち上がれないの!?」
比瑪 「ヒギンズさんが、来てくれたー!」
ヒギンズ 「乗るわ、ブレン!」
比瑪 「迎えに来てくれたの?」
ヒギンズ 「ついでよ。オルファンのガバナーを始末するつもりだったけど、辿り着けなかった!」
比瑪 「ゲイブリッジさんがガバナーだったのよ!」
ヒギンズ 「司令が!?」
シラー 「こいつらまとめて消してやる!」
シラー 「な、何だ?ウェハーが波立ってる!?」
シラー 「くっ、うわぁっ!」
ヒギンズ 「うわっ!」
比瑪 「わっ!何!?うわぁっ!」
ヒギンズ 「比瑪!」

比瑪 「ああ…」
比瑪 「ここは…一体?」
比瑪 「プレートが産まれてるところなの、ここ?ここって、まさか…」
比瑪 「オルファンの…子宮なのかしら?」
比瑪 「あっ!…ああ…」
比瑪 「ここは」
比瑪 「あっ、あれは!」
比瑪 「お母さん」
比瑪 「お母さん…ありがとオルファン、お母さんに会わせてくれて!ねぇ、こんなに優しいあなたが、地球にひどいことなんてするはずないよね!」
比瑪 「地球ってね、こんな思い出をいっぱい持ってる生き物達が沢山住んでる星なのよ!…えっ」
比瑪 「あれは!?」
比瑪 「オルファンがふたり、戦ってるの?」
比瑪 「うっ!…あぁ、それで地球へ落ちてきたの?もうひとりのオルファンは、どうなったかわからないの?」
比瑪 「ああ!ブレンとグランチャーって、別々のオルファンの子供だったの!?」
比瑪 「勇!」

勇 「比瑪!」
勇 「うっ!…いってー…」
カナン 「どうしたの?勇?」
勇 「比瑪が見えた!すぐ消えたけど」

シラー 「くっ!」
シラー 「でやぁ!」
ヒギンズ 「あっ!」
シラー 「はああっ!」
ヒギンズ 「ああっ!」
ヒギンズ 「がっ!は…」
シラー 「ジョナサンの邪魔をする貴様らは、あたしが許さない!」
ヒギンズ 「ううっ、ぐぅっ」
シラー 「弟達を飢え死にさせたあたしでも、ジョナサンの役には立つんだ!…ぐっ!」
ヒギンズ 「あたしだって、動乱の時代に流れ者になって逃げる先々で家族を死なせてしまった運の無い女よ!でもね、あたしだって…!」
シラー 「あたしの方がもっと酷かったんだ!オルファンで地球を滅ぼしでもしなきゃ!」
ヒギンズ 「そんなんだからグランチャーはあんたを選んだ!あたしは運命に殉じた、そしたらブレンに出会えた!」
シラー 「運命なんか変えれば良い!」
ヒギンズ 「胸にバラを刻んで覚悟を決めたらね!プラハでブレンを見た時、この花びらが熱くなったのよ!」
シラー 「ぐっ!」
ヒギンズ 「土人形のゴーレムは花を愛さなかったから土に還るしかなかったけど、ブレンは花を愛する!弱い者を守るために強い命が生まれるのよ!」
シラー 「小娘の言うこと!」
ヒギンズ 「はっ!」
シラー 「ちぃっ!」
シラー 「ええぃ」
ジョナサン 「フッフッフッフッ、ハッハッハッハァ…ッハッハッハッハッハッハ!」
ジョナサン 「こんなとこにいたのかよ、バイキン!消えろよ!」
ヒギンズ 「ああっ!」
ヒギンズ 「これは、オルファンがあたしに力を貸してくれている!?」

比瑪 「何この光、この透けたプレートは?」

シラー 「馬鹿な。異分子のブレンパワードが、オルファンのエナジーを使うなど…」
ジョナサン 「くっ、そんなことでバロンズゥの力を防ぎきれるものか!ぜりゃああー!」
ヒギンズ 「ああっ!」
ジョナサン 「それそれそれー!」
ヒギンズ 「うわああああー!」

カナン 「ヒギンズ・ブレン?」
勇 「オルファンから出てきた」
カナン 「オルファンが吐き出したの?」
勇 「そうなの?」

カナン 「比瑪!?」
カナン 「ヒギンズ大丈夫?生きてるの?」
ヒギンズ 「あ、ありがと、カナン。比瑪ちゃんも出られたの?」
カナン 「元気みたいよ!」
比瑪 「オルファーン!ありがとう!あたしたちのこと、嫌いじゃないんだね!?」
比瑪 「ならさ、あたしのお話だって聞いてよ!寂しがり屋さんというの、恥ずかしいことじゃないんだよ!」
勇 「比瑪!後退しろ!何が起こるかわからないぞ!」
カナン 「オルファンが銀河へ旅立つの?」
ヒギンズ 「そうはならないと思うわ」
カナン 「え?」
ヒギンズ 「そんな気がするから…」
勇 「オルファンが…大地を離れる」
比瑪 「飛べばいいんだよ、オルファン」



第22話「乾坤一擲」←
https://ishikobafuji.diarynote.jp/201209010030393229/
 →第24話「記憶のいたずら」
https://ishikobafuji.diarynote.jp/201305181024327304/

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